日本の文学

日本の文学

8世紀の初め、皇室を中心とした国家体制が完成すると、日本古代の神話と歴史が「古事記」と「日本書紀」にまとめられました。「古事記」は故事を記憶擦ることを職としていた宮廷の役人が暗唱していたものもとめた記録です。「古事記」は日本最古の文学と考えられています。「日本書紀」は本格的な史書です。先進隣国の中国に敬意を払い、純粋な漢文体で書かれています。

8世紀の後半には最古の歌集「万葉集」が登場しました。これは20巻からなって、450年にわたって天皇から庶民まで各階層の作者が作った約4500首の歌が含まれ、万葉仮名と呼ばれる表記法が用いられています。

11世紀の初めに、紫式部の作品「源氏物語」が現れて、主人公光源氏の華やかな宮廷生活を描いていました。「源氏物語」は王朝文学の傑作と言われて、日本文学の代表作としても定評はあります。

12世紀、武士階級が台頭し、武士階級による中央政権への進出がはじまって、やがて源氏や平家による武家政治の実現を見ました。これを反映して、この時代の文学は仏教的無常観から書かれた作品が多いです。その代表作が「平家物語」で、作家は不明です。作品の内容は12世紀後半の平家一門の繁栄と滅亡を描いた物語で、作品の根底には盛者必衰という仏教観が貫かれています。

17世紀初めに江戸幕府の創設とともに、町人中心が誕生しました。その代表できな存在が井原西鶴と近松左門衛門です。井原西鶴の代表作は「好色一代男」で、世之介とういう好色の男の生涯が書かれています。近松左門衛門は浄瑠璃や歌舞伎の脚本をたくさん執筆して、当時の庶民の姿を巧みに描きました。

19世紀後半の明治時代以降、日本は西欧との交流を深めて、その影響を受けて様々な文芸思潮や新しい作品が生み出されました。近代文学の二大巨峰といわれるのが森鴎外と夏目漱石です。「舞姫」は森鴎外の処女作で、胸中の苦悩を描いた自伝的な色彩の強い作品です。また、「吾輩は猫である」は漱石の処女作です。猫を主人公とした、擬人体で書かれて、飼い主の家族、周囲の人物とそこに起きる様々な事件が飼い猫の目から鋭い風刺とユーモアの世って書かれています。

日露戦争前後、島崎藤村や田山花袋などの自然主義を唱える作家が台頭して、藤村の「破戒」、花袋の「蒲団」なとが代表的役割を果たしました。自然主義はその後も近代文学の最も大きな運動として、広く影響を及ばしていきます。島崎藤村は「夜明け前」で「家」と「個」にはさまれた主人公の苦悩を、「破戒」では部落差別を通して主人公の自我の目覚めを描き出しました。それらには個人の内面や現実の社会の困難がなりのままに描写されています。しかし、人間の姿を赤裸々に描く自然主義は、その否定的な面のみを強調するの陥って、そこから反自然主義の傾向が生まれました。

そのほかに、夏目漱石の影響を受けた武者小路実篤、志賀直哉、有島武雄らは自己の個性を生かし、教養を深め、人道主義を広げるという意図を持って、雑誌「白樺」を発刊しました。白樺派の中心として、活躍した武者小路は、「個性を生かす」ことが「人類の意識」で、「われらに創作させるものも人類の意識である」と考えました。白樺派の作家は大正期の文壇に大きな影響を与えて、中では志賀直哉の長編小説「暗夜行路」は高い評価を得ています。

新感覚派運動を起こした川端康成らは既存の現実主義にあきたらず、官能や神経に病的な敏感さを見せ、意匠や装飾に新しいものを狙いました。川端の代表作「伊豆の踊子」「雪国」は今日も広く読まれて、川端は日本人では初めてのノーベル文学賞を(1968年）受賞しています。「飼育」などの作品で登場した大江健三郎は戦後青春の疎外感などを定着させた作家で、1994年日本二人目のノーベル文学賞を受賞しています。

一方、社会主義的民主化運動を反映した作家も登場しました。「播州平野」、「蟹工船」などの作品を発表した宮本百合子と小林多喜二はプロレタリア文学の旗手で、佐田稲子や徳永素直もポロレタリア文学の戦前前後を与えた代表的作家です。

現在、読者の要求も様々な広がりを見せ、純文学と大衆文学の距離が縮まり、中間小説と呼ばれる作品の流行を見るに至りました。推理小説なども昨今は全盛期を迎えた感があります。

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